「海外で財布をすられたら、どうしよう」。出発前にそんな想像をして、急に怖くなったことはありませんか?

実は私も、初めての一人旅の前夜はまさにそれでした。盗難の体験談を読みあさって余計に不安になる始末…。でも、20リットルのバックパック1つで海外を旅した今なら断言できます。盗難対策の9割は、出発前の準備とちょっとした習慣で決まります。

この記事では、私が実践している7つの防犯術を場面別に紹介します。最後には、万が一盗られたときの対処手順も。読み終わる頃には「これだけやれば大丈夫」と、肩の力が抜けているはずです。

海外旅行の盗難、実は「初心者だから狙われる」わけではない

まず、いちばん大事な話からします。スリが狙うのは「初心者」ではありません。「隙」です。

考えてみてください。スリはあなたのパスポートを見て旅行回数を数えているわけではありません。彼らが見ているのは、後ろポケットのスマホ、椅子の背にかけたバッグ、足元に置きっぱなしの荷物。つまり行動です。

これは裏を返せば、希望でもあります。隙は技術で消せるからです。旅慣れているかどうかは関係ありません。実際、私は旅を始めて間もない頃から被害ゼロですが、それは度胸があったからではなく、これから紹介する習慣を機械的に守ってきただけです。

緊張しなくて大丈夫。ここから先は、その「技術」を1つずつ手渡していきます。

防犯術①:出発前に現金・カード・情報を「分けて」おく

最初の防犯術は、日本にいる間に完了します。ここをやっておくと、現地での安心感がまるで違います。

現金とカードは最初から2〜3か所に分ける

財布に全額、はいちばん危険です。私は「メイン財布」「バックパックの内ポケット」「服の内側」の3か所に分けています。仮に1つ盗られても、旅が続けられる状態にしておくためです。20リットルの荷物でも分散はできるので、スーツケース派の方なら、なおさら簡単です。

パスポートのコピーと写真を準備する

顔写真ページを紙でコピーし、スマホでも撮影しておきます。紙とデータの両方、これがポイントです。再発行の手続きや警察での説明が格段に楽になります。コピーは原本と別の場所へ入れてください。

緊急連絡先を紙にも控える

カード会社の緊急ダイヤル、大使館の電話番号、家族の連絡先。これを紙のメモに書いておきます。スマホごと盗まれると連絡先が全部消える。これが盗難被害でいちばん詰むパターンです。紙切れ1枚、重さは、ほぼゼロ。持たない理由がありません。

保険とカード停止の手順を確認する

携行品損害の補償が付いた海外旅行保険か、クレジットカード付帯の保険でカバーされるかを確認しましょう。あわせて、カードを止める手順を一度シミュレーションしておくと、いざというとき迷いません。

防犯術②:財布は「盗られても旅が終わらない」構成にする

2つ目は財布そのものの話です。結論、メイン財布には1日分の現金とカード1枚だけ入れてください。

理由は単純で、出すたびに大金が見える財布は、それだけで狙われやすくなるからです。残りは予備財布やバッグの奥へ。私はメイン財布に入れる額を「その日使う分プラス少し」と決めています。

防犯術③:防犯グッズより「管理しやすい持ち方」を選ぶ

「防犯グッズや防犯性の高いバッグを買うべきですか?」とよく聞かれます。私の答えは、買わなくていい、です。

バックパックのファスナーに鍵をつけたりするのは最初は使ってましたが、使っていくうちに手間になり使わなくりました。

スマホは2つだけ守ってください。①ストラップで体につなぐ、もしくは体に巻きつけるポーチの中に入れる ②ズボンの後ろポケットに入れない。後ろポケットのスマホは、混雑した場所では「どうぞ」と言っているようなものです。

防犯術④:移動中は「荷物から手と目を離さない」

移動中は荷物が多く、注意も分散します。場面ごとのポイントはこの4つです。

①空港:チェックインや両替の最中、足元のバッグから手が離れる瞬間が危険です。荷物は足の間に挟むか、体に触れさせておく。私はバックパックを下ろすときも、必ず片足を肩ひもに通します。

②電車・バス:スリが多いのはドア付近の混雑です。発車直前にスマホを抜き取り、そのまま降りる手口が定番。乗ったら少し奥へ進み、バッグを前に抱えるだけで標的から外れます。

③タクシー・配車アプリ:盗難だけでなく置き忘れも実質同じ損害です。降りる前に「スマホ・財布・パスポート」と指差し確認を。配車アプリなら乗車履歴が残るので、初心者には心強い味方です。

④長距離移動:パスポート・現金・カード・スマホは、必ず手荷物へ。預けた荷物は自分の目が届きません。私が預け荷物を一切持たないのは、身軽さのためだけでなく「全財産が常に視界にある」という安心のためでもあります。

防犯術⑤:観光中は「夢中になる瞬間」を仕組みでカバーする

観光中は気分が上がって、注意力が落ちます。これは仕方のないこと。だから意志ではなく、仕組みでカバーします。

人とぶつかるくらいの混雑では、バッグを体の前へ。誰かにぶつかられたら、直後にバッグを確認する癖をつけてください。スリはぶつかった一瞬を使うことが多いからです。

写真を撮るときは、荷物を地面に置かず背負ったまま。撮影に夢中の瞬間は、旅でいちばん無防備な時間です。

「シャツが汚れてるよ」「写真を撮ってあげようか」。このように一見親切そうに話しかけてくる人物には警戒して下さい!注意をそらす手口にも使われます。一歩下がって、荷物に手を添えながら対応すれば十分です。

それと、道の真ん中で立ち止まってスマホの地図を見るのは避けましょう。「迷っている観光客」だと一目で分かってしまいます。壁を背にするか、店に入って確認する。それだけで隙が消えます。

防犯術⑥:食事中こそ「貴重品を体から離さない」

意外かもしれませんが、食事中は盗難が起きやすい時間です。リラックスして、貴重品が体から離れるからです。

  • スマホをテーブルに置いたままにしない(特にテラス席。通りすがりに取られる典型例です)
  • バッグを椅子の背にかけない(自分から見えない場所は、無いのと同じです)
  • 席取りで荷物を置かない(海外では「どうぞ持っていって」と同じ意味になります)
  • 会計時は「スマホ・財布・パスポート」を確認してから立つ

私はこの最後の確認を、口の中で小さく唱えるのを習慣にしています。地味ですが、置き忘れと盗難の両方に効く、コスパ最強の防犯術です。

防犯術⑦:防犯意識の「オン・オフ」を先に決めておく

最後の防犯術が、私が海外を旅して行き着いた結論です。大事なのは警戒し続けることではなく、いつ警戒するかを先に決めておくことです。

ずっと気を張っていると、3日目あたりで疲れ切ります。そして疲れた日に限って、被害にあう。警戒は体力を使う行為なんです。

だから私のルールはシンプルです。①混雑した場所 ②駅と空港 ③飲食店の席。この3つに入ったら防犯モードをオン。それ以外は旅を楽しむ。メリハリをつけたほうが、結果的に注意力が続きます。

もう1つ、覚えておいてほしいことがあります。被害にあいやすいのは、危険な地区よりも「ホテルに着く直前」「楽しい食事の最中」「帰国前日の油断」。場所ではなく、自分の気の緩みを基準に警戒する。これが、初心者にこそ伝えたい視点です。

盗難にあったときのチェックリスト

万が一のときは、この順番で動いてください。順番を知っているだけで、パニックの度合いがまったく違います。

①身の安全を確保する:まずその場を離れて安全な場所へ。犯人を追いかけるのは絶対にやめてください。物は戻りますが、体は替えがききません。

②カード会社へ連絡する:不正利用は時間との勝負なので、警察より先で構いません。出発前に書いた紙のメモが、ここで活きます。

③警察で盗難証明を取る:現地警察で盗難届を出し、証明書をもらいます。保険金の請求とパスポート再発行の両方で必要になる、いちばん大事な書類です。

④保険会社・大使館へ連絡する:保険会社のサポートデスクで、請求に必要な書類を確認します。パスポートを盗られた場合は、日本大使館・総領事館で再発行か「帰国のための渡航書」の手続きを。窓口の場所は保険会社のデスクでも教えてもらえます。

まとめ 盗難対策は準備と習慣でかなり防げる

ここまでの内容を一言にまとめます。「分ける・前に持つ・確認してから立つ」。やることは、結局これだけです。

完璧を目指す必要はありません。気を張りすぎた旅は、それはそれでもったいないですから。警戒する場面だけ決めて、あとは思いきり楽しんでください。

今日できる最初の一歩は、カード会社の緊急ダイヤルを紙のメモに書き写すこと。5分で終わります。その5分が、旅先のあなたを必ず守ってくれます。